新大のマリオと呼ばれた日
僕にはこれまで1度だけ、インターネット上で世間の皆様からボコボコに叩かれ、挙句には個人情報を2chで晒し上げられたことがあります。
それは僕が『新大のマリオ』と呼ばれるようになった日のことでした。
今から3年前、僕が大学1年生の6月。
もうなんていうか、この写真で察してほしい。
赤と緑の兄弟が六法書とゲームキューブを持って講義を受けている。
3年前にTwitterで2万リツイート以上され、なんとYahoo!トップページでも紹介された「新潟大学の講義にマリオとルイージいるんだけど(笑) 」というツイート。
このマリオが僕です。新潟大学人社棟E160講義室。
当時、この写真がバズって「大学の講義にこんな格好で出席するなんて非常識だ!」とネット上でかなり叩かれました。
ちょうどバカッターという言葉が流行った頃でした。
ネットから拾える僕の個人情報は2chで晒され、僕は実名名指しで総叩きされていました。
あの頃はたしかに大学に入ったばかりで浮き足立っていたし、若気もずいぶん至ってた。
でも、この件に関しては今でも反省してはいないし、当時も反省する必要がなかった。
あの日、マリオの格好をして講義室に入って行った時、僕らは先に来て授業の準備をしていた同級生たちに感嘆と拍手で迎え入れられた。
「本当にやってきたんか!」「よくやったな!」
驚きとか喜びとか、尊敬とか、いろんな表情があった。
だって実はこの日、僕らは全力で変な格好をして講義室にやってくることを期待されていたから。
期待されていたのは僕らだけじゃなくて、この講義に出席する学生全員。
嘘だと思うなら、手前のウサ耳を見てくれ。
3年前の6月の民事法の講義、とても面白くて学生からも人気の高い法学部の教授が言った。
「来週、新大のホームページ用の写真を撮影しにカメラマンが講義室内に来るらしいです。でも僕はそういうの嫌なんですよ。だから皆さん、全力で変な格好をしてきて写真撮影を阻止してください。」
この言葉を聞いて講義室にいた皆んなが思ったんです。
あ、本気でフられてるなって。
教授からの絶妙なセンタリング。
これでゴールを決めなければ男に生まれた意味がない。
僕は講義が終わるとすぐに電車に乗って新潟駅前のサイゼリヤに行き、友人と会議を行いました。
「いちばん講義室にふさわしくない物を持って行こう」
僕らは、講義室に絶対ない物のアイデアを出し、ゲームキューブを持ち込むことに決めました。
「ゲームキューブを持ち込むなら任天堂だし、マリオのコスプレする?」
僕らはすぐにYahooショッピングでマリオとルイージのコスプレを買いました。
そうして着実に準備を進め、作戦決行当日を迎えた。
共犯者のミヤタは僕らが座る、講義室のいっちばん目立つ席をゲームキューブで場所取りしてくれた。
せっかくならツイッターで流そうとカメラマン吉田はいちばん面白く撮れる位置を陣取った。
僕は相棒ナカダと講義室近くのトイレでマリオとルイージの服に着替え、白い手袋を手にはめて講義室に走った。
それでこれ。
カメラマン吉田はすぐにTwitterで投稿。
リツイートとお気に入りの数はまたたくまに増えていった。
100…1000…3000…5000…ついに10000リツイートを超えた。
高速バイブレーションは更に加速し続け、遂にスマホは微振動しながら空に浮かんでいった。
数週間後、大学のホームページが更新された。
その日の講義風景がたくさん使われていたが、赤と緑の姿を探しても見当たらなかった。
ウサ耳も見当たらなかった。
マリオの日以来、多くの友人が声をかけてくれた。
「ウサ耳やばくねw」
ウサ耳に激しく嫉妬した。
2chで自分の個人情報を見つけた。
ネットの怖さを身を持って体感した。
緊張と興奮、歓喜、落胆や恐怖、色んな感情が詰め込まれた面白い1日だったことを今でもよく覚えています。
僕は人とのコミニュケーションに自信が無いから、なんとか目立つことをやって自分を守ろうとしてる。
自分を守る時に、どうせなら一緒に周りの人を楽しませようと思って色んなことを考える。
これがいっつもワンセット。
今やってる「チョンマゲ卒業旅行」もその一つ。
クラウドファウンディングでお金を集めてブラジルに行きますなんて、よくそんな恥ずかしいことできるなと我ながら思う。
でも、それが自分の守り方だから仕方ないこともわかってる。
だったらどうせなら巻き込んで巻き込まれて、一緒に楽しんでいきたい。
挑戦中です。実験中です。調査中です。
温かい目で巻き込まれてくれると嬉しいです。